「木挽町 とも樹 ←ホントはこういう名前らしい」夫婦で銀座で買い物をした後、食事して帰ろうかということになり、ふと思いついて行ってみた。雑誌かなんかで見て気になっていた店。5時半から6時くらいだったか、早い時間に行った。あらかじめTELして予約は取ったが、客は私たちの前にひと組いただけで、私たちが帰る時間まで結局ふた組だけだった。冷蔵ネタケースのない白木のカウンターが実に清々しく、気分が良い。カウンターの後ろの木製扉の氷の冷蔵庫(若い衆は氷の冷蔵庫なんて知らないかも)は思い切り立派で、一見の価値あり。店主の表情はホスピタリティに溢れていて、しかもサラリとした都会的なサーヴィスでうるさくない。店主の他に助手の若いひとがいて、店主の母親らしきひとが接客にあたっている。店主も30代前半か。生ビールは実にきめ細かい泡が載っていて、それだけでもプロな仕事ぶりが気分がいい。ぬる燗を頼んだら、樽の香りのする酒が出てきた。鮨屋らしく適度な芳醇さで、美味しい。普段はつまみには目もくれず、「握り原理主義」で、最初から酒を飲みながらとにかく握ってもらうという流儀で鮨屋に通うが、ここは初めてなので店主の流儀に合わせて「おまかせ」でお願いした。つまみはどれも手のかかった仕事がしてあり、楽しめた。カニの身をほぐして大きなボール状にしたものはインパクトもあったし、すごくおいしかった。馴染みのある魚や貝でも、私たちの知らない部位を、私たちの知らない仕事で食べさせてくれることが多くて、楽しんだ。もちろんオーソドックスなあわびなどもさりげなくおいしく食べさせてくれた。握りも品が良く、見た目も端正。どこかのサイトで、酢飯の酢が穏やか過ぎると書いているひとがいるが、なんだかこの鮨屋はこれでいいような気がする。店主のおだやかさ、行儀の良さが鮨にも出ているような感じが好ましく思われる。デザートのトマトとゼリー(バルサミコだったっけ?)も美味しかったし、最後の椀(確か鯛だったような......)もあっさりとして、滋味溢れる味わいで好感が持てた。生ビール一杯とぬる燗3本で、ふたりで45,000円くらい。納得のいく値段。仕事でくたびれ気味の身体にぬる燗も店主の笑みもじんわりと効いた。
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